宇宙を翔ける若者たち第2部第8章

宇宙を翔ける若者たち

第2部 惑星移住へ

第8章 ロウソクの明かりで

町並みが疎らになり、川土手の少し坂道を登ってから土手上の道路の横断歩道を渡った。2車線の車道と片面の歩道がある橋を歩く親子連れの頭上は、停電のおかげで満天の星が輝き、川岸の草むらではジー.ジーと鳴く虫の音が聞こえていた。

橋を渡り終えて3差路の道になり、右手の土手沿いの道路を歩いていると数百軒の家並みの中で、所々の古い家では明かりが点いていた。土手から降りる道路を懐中電灯で照らして下り終え、3分ぐらい歩いて行くと3差路になり、左手の勾配が緩やかな坂道を歩いて行くと、右手に神社の境内が見えてきた。その脇の平屋の我が家でも何時もとは違う明るさの灯りが燈っていた。

ヤスジは「停電していない家もあるんだね。」歩きながら母親に言うと、
ハナコは「そうかも知れないね、でも、家は停電になっているので、父さんがロウソクを準備してくれて助かったのよ。」微笑みながら、トシカズに感謝の気持ちをにじませながら話した。

玄関の戸を開けると長押に掛けられた年代物の蝋燭(ロウソク)立てが掛けられ、神前で使う大きなロウソクからほのかな明かりで周りを照らしていた。

ヤスジは靴を脱いで下駄箱に靴を収めて廊下を歩いて行く。右の台所を過ぎ、その横の居間に入って「ただいま、所々の家が明るかったので、てっきり停電が直っていると思ったよ。」父に挨拶をした。
ソファーに座っている父は「お帰り、まだ停電から復旧してないので、ロウソク立ては納戸から出して使っている。古い物でも役に立っているよ。」ヤスジに言って迎えた。
ハナコも入ってきて「ご飯は炊けているけれど、オカズ作りは途中で停電になったので鍋にします。お父さん、鍋でも良いですか?」トシカズに聞いた。
トシカズは「鍋でいいよ。久しぶりに3人で一緒の食事だから。」同意した。

ハナコが料理を準備している時に、トシカズはテーブルと椅子(イス)6脚がある処に移動して自分の椅子に座った。
ヤスジは台所の冷蔵庫から冷酒のビンと麦茶を出しテーブルに置き、食器棚からコップを3つ出してから1つをトシカズの前におき、ハナコの用コップを置き、ヤスジは自分の椅子に座った。
ヤスジが冷酒のビンのフタを開け、父親に酒を勧める「父さん、どうぞ」
トシカズはコップを持って「ありがとう。」言う。
酒を注ぐヤスジ、酒のツマミが無いのに気づき、立ち上がってから台所に行き、イリコと皿を取りに行く。

その背後から、トシカズは「研究は上手くいったのかい?」聞いてきた。
イリコと皿を持ってきたヤスジは、テーブルに皿を置いてイリコを載せて椅子に座った。
トシカズはヤスジのコップに酒を注いであげた。

「ありがとうございます。」ヤスジは礼を言ってから「実験対象物は消えて隣の部屋に移動出来なかったので失敗でした。実験を中断して自分の部屋で研究テーマについて考えていたけれど、思い浮かばず外の雲を見ていたらヒントが浮かんだので今日は早く帰って来ました。」言い終えてコップの酒を飲んだ。

二人はコップの酒を飲み終わる頃に、湯気が立ち上がる鍋を手にしたハナコは居間兼食事室に入ってきてテーブルの鍋敷きの上に鍋を置いた。

ハナコが椅子に座るのを見届けてトシカズは両手を合わせて「頂きます。」と言うと,

ハナコとヤスジも両手を合わせて「頂きます。」と言って箸を取った。
3人は土鍋の中の野菜・ちくわ・白身の魚・鶏肉・コンニャクを取り皿に入れて、レンゲで鍋の中の出汁をすくって取り皿に注いだ。]

トシカズは「今日も良い出汁がでて、料理上手の妻がいるので俺は幸せ者のだ。」言うと、ハナコはまんざら無い様子「やですよ、酔っているの貴方?」で言う。
ヤスジは2人を見ていると、自分も何時は結婚しないと思っていると、不意にタムラ・エツコの顔が浮かんだ。
トシカズは「どうした私の顔に何か付いているか?」聞いた。
ヤスジは「いや、どうもご馳走さまで、幸せそうで良かった。」2人に嘘をついた。

ハナコは話題を変えて「ロウソクの明かりって仄々して良いものですね。さぁ、2人とも食べてくださいよ。」言うと
トシカズは急に真顔になって「お前の祖父さんが長患いしていた時に祖母さんとハナコには苦労掛けたので、感謝している。」話した。
ヤスジは「そう言えばバァちゃんは亡くなって何年になるの?」母親に聞いた。
ハナコは「そうだね、お前が助教授に成ったばかりの頃で、3年目になるかしら。」言った。

取り皿の中の食べ物が無くなる頃にヤスジは「今日、テレビ局の女のアナウンサーが来て、【世界で話題の有名人】と言うテレビに出演することに成ったよ。テレビ放映はだいぶ先の夏頃になるそうです。」報告した。
ハナコは「その人若い人なの、育ちは良さそう?」聞いてきた。

「何で、そんな話になるの?」ヤスジは言うと
トシカズは「そうだなー、俺の後を継いで欲しいし、早く孫の顔を見たいと思っている」願望を込めて言った。
ヤスジは「駄目だ、今は研究最優先だから!それに神道なんて古臭い。」大きい声で言った。
トシカズは「余り苛立つなよ。私の願望を言った訳だ。ハナコも単純に孫の顔が見たいだけなので、私たちの押し付けと思わなくていいから。」少し声を落として言った。

ヤスジは「その内、研究が成功して政府に認可が下りて、惑星移住のプロジェクトが成功したら跡を継いでも良いと思っている。」2人を安心させる為に言った。
ハナコは「それを聞いて安心したわ」単純に喜びながら言った。
トシカズは「ところで、神道は古臭くないよ。オオヌキ教授の話を聞くと神道に通じる話もある。最初の神だけで混沌した状態から2つの神が創造された。それに参考になればと思いこの本を見てくれ。」と言って神道の本を手渡した。

ヤスジは「父さん、有難いたいけれど、エリヤ教と比べ偶像崇拝があるので僕にはしっくり来ない。」父親に訴えかける。
トシカズは「違うよ!神社に入り口に狛犬あるだけで、その狛犬そのものを崇拝している訳でない。1つは始まりを意味して、もう1つは終わりを意味する事柄を象徴しているだけだよ。」言いながら困惑していた。
ハナコは「私は、難しいこと判らないけれど、神様は、この世を作ってくれて有難いな。だって、お父さんに出会ったし、お前に恵まれた。それに美味しいもの食べられるし」ヤスジに言った。
ヤスジは「判ったこの本を読んでみるよ」言って、手にしていた本を右脇に置いて茶碗に持ち替えて、残ったご飯を食べた。

3人は食事を終え、「おいしかったよ!」・ 「おいしかった!」 ・「うまかった!」言った後、「ご馳走様でした。」言って、食器を片付けて台所に持っていく。
台所の蛇口から水の出が悪いので、2人は食器洗いを諦めてハナコは「どうしましょうか?」トシカズに聞く、トシカズは「停電が直るまでは、無理の様なので居間に戻ろう。」と言って居間に戻ってきた。

ヤスジは暗いので本も見えない為、窓際から「3人で星を見るのも良いでは・・・」親たちに声をかけた。
窓を開けて、庭の丸テーブルと丸太で出来た椅子の処に行き3人は座った。
ハナコは座る時にテーブルに急須と湯飲み茶碗が置き、湯飲み茶碗にお茶を注いだ。
遠くにはなだらかな山、余り高くないビルや家々はよく見えず、空は星々が輝き、所々に雲が流れていた。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック